2001年04月10日

白川 浩道
当社では当面JGB相場に強気
10年国債利回りは、3月19日の日銀による実質ゼロ金利復帰後、上昇トレンドに転じたように窺われる。しかし、当社では、年内を展望した場合、10年国債利回りのコア・レンジとして0.8%〜1.3%を予想している。以下では、当社が、特に夏場までの短期について、長期国債相場に強気であることの背景を指摘したい。

最近の長期債利回り上昇の動きについては、基本的には、ゼロ金利復帰後、株価が堅調な動きを示していることが背景にある。ただ、我々としては、株価が今後も安定的に推移する保証は必ずしもない、と考えている。株価の堅調な動きは、銀行の不良債権処理の進展とその反射効果としての産業構造改革に対する期待、株式買取り機構の設置による需給改善期待、日銀による更なる流動性供給に対する期待、といった3つの期待の複合によってもたらされているものとみられる。しかし、残念なことに、この3つの期待はすべて希望的観測に過ぎなかったことが次第に明らかになるものとみられる。政府の緊急経済対策に関しては、4月6日付のデイリーレポートでも指摘した通り、当社ではその内容が抜本的に日本の構造的問題を解決するものではないと評価している。また、株式買取り機構については、政府と与党が詳細(設立時期、組織、政府の関与)に関する合意をみないままで、案そのものが廃案となる可能性が高い。他方、日銀の流動性供給については、当面、日銀は、当座預金残高5兆円というターゲットを変更しないものとみられ、その場合には、昨年平均との対比でみて、むしろ日銀による流動性供給は縮小することになる。

2つ目に、当社では、景気後退および不良債権処理の進展から、銀行貸出残高の縮小ペースが加速するものとみている。緊急経済対策によって主要行には不良債権の最終処理に向けた数値目標が設定された。最終処理の柱は債権放棄となる可能性が高く、産業構造改革には何らのプラス面ももたらさないとみられるが、銀行のバランスシートから不良貸出がオフバランス化されることに変わりはない。マクロ環境が悪化する中で、新たな優良な貸出先が増加する状態ではない。また、株式市場のアップターンも望めないとすれば、金融機関が国内投資を継続すると仮定した場合には、結局のところ、消去法的に債券市場に資金が流れ込む環境は変わらないことになろう。

3つ目に円相場が今後大きく円安化する可能性は低いとみている。日銀による流動性供給が当面は増加しないこと、このため、国内におけるデフレ期待は変化せず、家計・企業の貯蓄・投資行動が大きく変わるわけでもない。国内民間部門の貯蓄が政府投資(財政赤字)を十分に上回る状態が崩れるリスクは小さい。また、アジアや米国政府が、現在の経済環境の下で、円安傾向の進展に際限なく我慢できるわけでもない。円相場の安定的な軟化に自信が持てない限り、国内投資家の対外投資が目立って増加することはないとみられる。

最後に、財政政策運営に関しては、少なくとも7月の参院選挙までは、補正予算等、財政面での景気刺激策の話が具体化することはないとみている。そうであれば、国債需給が目だって悪化することはなかろう。

ただし、秋以降に関しては、債券相場が堅調に推移する保証はないかもしれない。当社では秋以降のシナリオについて、慎重な検討が必要とみている。それは、参院選の結果にもよるが、秋以降のマクロ政策運営は債券相場にとって強い逆風を生じさせるものとなる可能性が出てきたからである。株価の低迷が夏場まで続いた場合、政府は、デフレ的な構造改革の推進を一時的に棚上げし、財政・金融政策の総動員による短期的な景気刺激策の再導入に走る可能性を否定できない。財政刺激策の導入にムーディーズによる日本国債の再格下げが重なれば、国債利回りは上昇圧力を受けよう。その場合、日銀は国債相場サポートを目的とした流動性供給拡大を迫られることになろう。ここで、「日銀は本格的なリフレ策に踏み切った」との見方が広がることになれば、日本の貯蓄・投資バランスが変化し、円相場が下落する可能性がある。株価も日銀の流動性拡大に反応し、流動性相場を形成する可能性がある。多くの要因は債券にベアなものとなり、長期債利回りが大幅に上昇するリスクがあるのである。当社では当面は10年債利回りのコアレンジを変更する予定はないが、秋以降については、大幅なアップサイド・リスクがあることを指摘しておきたい。

以 上  
TEL: 03-5297-7311 - FAX: 03-5297-7314
Copyright © 2000 CMD Co., Ltd. All rights reserved.
Prev Index Next