2000年6月30日

白川 浩道
来年の景気は再びスローダウン

 やや気が早いが、2000年も年央となったので、来年にかけての景気見通しを示しておきたい。 結論から言えば、実質成長率は、2000年に1%台半ばまで上昇した後、2001年には、再び0.5〜0.6%にスローダウンするものとみている。 輸出とIT関連の国内需要が拡大するなか、足元では所得と支出の好循環が働き始めているが、こうした好循環の息はそう長くない。 2001年入り後は、需要の両輪の一つである輸出が世界経済のスローダウンの下で減退し、好循環の輪が途切れてしまう可能性が高いのである。

 大蔵省の法人企業統計によると、企業の売上高は、99年10〜12月期以降、 前年比2〜3%のペースで増加している。物価が低下を続けていることからすれば、実質所得は3〜4%の速度で拡大していることになる。 いよいよ日本経済も2〜3%成長へ復帰かと思いたくなるが、経済情勢は予断を許さない。最大のネックは、 労働分配率(人件費の法人所得に対する比率)が高止まっており、企業リストラが依然として完了していないという、構造的な脆弱性の存在である。

 企業業績が右肩上がりで改善を続ける限り、日本経済は緩やかな企業リストラをこなしながら、 成長率を徐々に上げていく可能性もある。しかし、企業の売上環境が世界経済のスローダウンの下で悪化すれば、 売上高の減少をカバーすべく、企業は再びコスト削減に動かざるを得なくなろう。売上高人件費比率の調整度合いをみると、 国際的な競争に晒されている大企業・製造業はそれなりに人件費削減に取り組んできた姿が窺えるが、製造業でも中小企業、 あるいは非製造業での調整は完了しているとは言い難い。世界経済がスローダウンしても、IT関連投資や個人消費が「自律的に」盛り上がらない限り、 2001年は、企業リストラの正念場となる可能性が高い。個人消費はスローダウンし、景気は0.5%成長へと減速しよう。

 このように考えると、金融・財政政策の正常化や中立化をまだ真剣に議論できる環境にはない。 日銀のゼロ金利政策については、この7月にも解除されようが、その後、「線形の」金利上昇を想定することは不可能であろう。 また財政政策も、公共事業縮小に本格的な手をつけられるのは、2002年度以降ではないか。むしろ、通常の金融・財政政策に手詰まり感がある中で、 日本の成長率、とりわけ税収等で重要となる「名目成長率」を回復させることを目的に、 政策論議の方向は中期的に「インフレ政策」へと進まざるを得ないとみている。具体的には、2001年秋頃からは、 円を1ドル=120円程度に強引に持っていく「円安誘導政策」が真剣に議論される可能性があろう。労働人口が縮小する中で、 生産性の爆発的な上昇がない限り、日本経済の進む方向は悪性インフレとなる可能性がある。このことを改めて念頭においた上で、経済情勢をみていくことが重要である。

以 上  
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