2000年7月14日

白川 浩道
企業リストラは道半ば

 日本企業のリストラはどの程度進んだと言えるのであろうか。 リストラをフローのP/Lの概念で捉えるとすれば、売上高経常利益率の上昇度合い、 あるいは売上高人件費比率の低下度合い等をみることが目安となる。

 ここで売上高経常利益率をみることのメリットは、 企業が人件費に限らず材料費やその他の経営コストを削減した場合、その動きが計数に現れるということである。 他方、経常利益には、循環的なコスト低下要因(例えば為替相場の堅調な推移による原材料コストの低下等)や、 有価証券売却益等の営業外収益が含まれてしまうという欠点がある。このため、 売上高経常利益率は企業の自主的なコスト削減努力以外の要因を反映することになり、 同利益率を用いてリストラのサステイナビリティ等を議論することには注意が要る。

 売上高人件費比率は、日本経済の特徴の一つである賃金の物価弾力性の低さを考えた場合、 その低下は企業による自主的なコスト削減を端的に示す面が強い。また、賃金が、下方に加えて上方にも硬直的であるとすれば、 ひとたび売上高対比で人件費が調整されれば、企業の収益基盤は(中長期的に)より強固なものとなるとみられる。 日本の労働分配率(家計所得の対企業所得比率)は、98年度、99年度と2年度に亘って調整されたことは事実であるが、 やや長い目でみれば依然としてかなり高い水準にある。所得は企業に薄く、家計に厚い状況が続いており、 構造的な調整の必要性が示唆されている。その意味では、リストラの進捗度合いを測る指標として、売上高人件費比率の動向に注目したい。

 上のチャートは、日銀短観ベースの売上高人件費率の動きである。 景気が比較的好調であった96年度当時をベンチマークとして表したが、ここからは、 @大企業製造業では人件費の調整がかなり進捗したと評価できる一方、A中小企業、 および大企業非製造業(特に大企業非製造業)では人件費の調整は遅れている、ことがわかる。

 物価の下落トレンドに変化が見られない状況下では、 企業の売上高が数量効果によって継続的に支えられていくというシナリオを想定しない限り、 経済全体には雇用面でのリストラ圧力が根強く残るということになる。短観をみる限り、 人件費の調節圧力は今年度一時的に後退する(全産業ベースで前年度比+0.3%<99年度−3.0%>)が、このことは、 世界経済の減速によって売り上げ環境が悪化する来年度以降には再び人件費削減圧力が高まるリスクを内包している。 企業リストラは正念場を迎えることになる。

以 上  
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