2001年09月19日

白川 浩道
日本経済の転機が見えはじめている

 株価の下げが加速している。世界的なIT不況の出口がみえないところに発生した米国でのテロ事件。今後予想される米国の軍事行動が、テロ組織との泥沼的な争いに発展した場合、世界的な消費者心理・企業心理の冷え込みに拍車がかかる可能性は否定できない。日本からの輸出環境は、IT関連に限らず、一般の消費財や資本財といった分野でも今後一段の悪化を見る可能性がある。生産調整に目処がつくのは、当初考えていたよりも4−5ヶ月は遅れ、来年夏場にまでズレこむ公算が高くなった。株価の低迷が続けば、金融システムの健全性に関する市場の見方が慎重化し、それがまた株価の下げを誘導する。株安が株安を呼ぶ悪循環のリスクが高まっている。

 しかし、これは必ずしも悲観すべきことではない。小泉政権の強みは、やや皮肉っぽく言えば、安易な経済・市場介入を行わないということである。これまでの保守的な政権であれば、平均株価が10,000円を割る前に、あらゆる株価下支え措置を講じていたであろう。小泉政権はこの点が一味違う。基本的に市場に判断を委ねている。その結果として、株価の下値不安が高まっているわけであるが、これは、資本主義経済の持つ自浄作用を強めつつあるのである。象徴的な出来事として、マイカルの経営破綻を挙げられよう。今後に第2、第3のマイカルが出て来ようが、これはまさに銀行がそのバランスシートの健全化に真剣に取り組み始めた証左である。

 そして政府がこうした民間金融機関の流れを後押しすべく、改めて不良債権処理の早期化にコミットするとともに、必要であれば、公的資本注入も視野に入れる、あるいはRCCの機能強化にも乗り出すとなれば、市場のモメンタムはプラスの循環に転じる可能性がある。さらに、そうした政策運営の下で必要となる財政資金の円滑な市場消化を日銀が助けることになれば、日銀資金の効率性も高まろう。市場の危機が正しい政策運営への道筋をつけるトリガーとなり、経済危機を救うかもしれない。日本経済の転機が見え初めている。

以 上  
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