2001年10月25日

白川 浩道
RCCの機能強化は経済再生を遅らせる?
  1.  RCCの機能強化を目的とした金融再生法の改正案が近々国会に提出される運びとなった。同改正案が成立すれば、RCCは、入札制度も利用しつつ、不良債権を「時価」で買い取る(買い取りは03年度末でまで、処分は06年度末までを目処)ことになる。

  2.  経済成長という観点からは、RCCの機能強化を通じた不良債権の最終処理が、どの程度、産業再編や日本企業の競争力強化に繋がるかといった点が最大の関心事である。いくら銀行における不良債権のオフバラ化を進めたとしても、日本経済の中長期的な成長力が回復しなければ、新たな不良債権の発生が継続し、結果として、金融仲介機能の本質的な回復も望めないからである。

  3.  RCCが引き取った不良債権を処理する具体的な手段には、法的整理、私的整理の適用といった再生型処理が加わることになる。今回のRCC機能強化の目玉は、担保の処分によって借り手企業を清算するのではなく、あくまで「不良債権企業を再建させること」にあるからだ。しかし、現状のRCCでは、物理的なスタッフの不足、そしてノウハウの欠如といった致命的な問題があり、不良債権企業毎に有効な再生策を策定することは困難であろう。RCCだけでは、不良債権企業を清算することも、再生することも十分にはできないことになる。

  4.  そこで登場したアイデアが、RCCが政策投資銀行や民間投資家を動因して設立する「企業再建ファンド」なるものである。この「企業再建ファンド」なるものが、不良債権企業の株式買い取り等によってその再生を助けていくことが想定されている。しかし、この「企業再建ファンド」も十分に機能する保証はない。法的整理も経ていない不良債権企業が再投資に値するような魅力的な企業となっている可能性は低いからである。

  5.  結局、民間投資家を十分に参加させることができなければ、結果として、政策投資銀行が不良債権企業の面倒をみていくことになる可能性が高い。そして、おそらく政策投資銀行にも、借り手企業の思い切った整理を進められる政治力はない。なんのことはない。RCC機能強化のアイデアは、RCCを一旦スルーして、政策投資銀行が大量の不良債権を抱え込むといった結果を招きかねないのである。国が、民間金融機関の不良債権を引き取って公的なバッド・バンクを作るに過ぎない可能性が高い。

  6.  日本経済に必要なことは、競争力の低い企業、不採算の企業を整理・淘汰し、より効率的な資源配分を達成することによって、経済全体の生産性を向上させることである。必要なことは「破壊と創造」であって、安易な「温存」ではない。しかし、RCC強化のアイデアは「不透明な企業再建」であり、これは、政府による新たなセイフティネットの構築と評価される。RCCの機能強化は、日本経済の中長期シナリオをむしろ悪化させる方向に作用する可能性すらあることを忘れてはならない。

  7.  日銀のRCC機能強化スキームに対する支援についてはどのようにみておけばよいか。日銀は、市場の浄化作用を後退させ、日本経済の復活を遅らせるようなRCC機能強化策に安易に与するのであろうか。当社ではその可能性は低いと考えている。RCC機能強化が「不透明な企業再建」に傾いた9月末以降、日銀のRCCに対する間接的な資本注入のインセンティブは大きく低下していると考えており、そうした見方を変えるだけの要素は当分出てこないとみている。重要なことは、日銀が協力しないということは、市場メカニズムの一段の機能障害を防ぐというとことである。仮に、日銀が事態を見誤り、RCCへの間接出資を行った場合には、更なるモラル・ハザードが生じ、日本経済は、将来、より大きなツケを払うことになる可能性が高い。

以 上  
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