2001年11月09日

白川 浩道
国債発行額30兆円にこだわることは問題

 第1次補正予算が成立する。歳出の追加額は3兆円となり、また、租税収入等の減額修正は1.1兆円になった。この結果、計算上は4.1兆円が必要になったが、新規国債発行額1.7兆円、規定経費や予備費の減額1.9兆円、前年度余剰金受け入れ0.5兆円で賄う。真水1兆円のうち0.8兆円が目玉の雇用・中小企業対策である。一般会計サイドは事前に公表されたとおりであり、特に目新しいものはない。

 1点注目として、財投で追加予算措置が組まれた。総額は617億円であるが、うち500億円が政策投資銀行向けであり、これは、企業再建ファンドの出資が名目となっている。RCCが銀行から買い取った不良債権を最終的に整理することになっている企業再生ファンドへの政策投資銀行からの出資が500億円とはあまりにも規模が小さい。企業再生ファンドに関するスキーム作りが進展していないことの証左である。柳沢長官も「我々は明確な規模等の認識を持っているわけではない」と述べており、こうした見方を裏付けている。もっとも、先行きについては、財投資金の投入はその規模では済まないであろう。当社では、引き続き、政策投資銀行そのものがRCCから不良債権を引き継ぐことになる可能性が高いとみているが、そこで必要となる財投資金は02年度〜03年度に5〜10兆円規模となる可能性がある。これは、主要行で額面60兆円規模の問題債権のほとんどを政策投資銀行に持ち込んだ場合のイメージである。なお、銀行に不良債権の徹底的なオフバラ化をさせる場合には、その手前で、査定の厳格化とそれによる過少資本穴埋めのための資本注入資金がいる。政府は、銀行のバランスシート健全化を真剣に考えるのであれば、10兆円を大きく越えるような資金を用意しなくてはならないということである。

 政府が30兆円の国債発行枠維持にこだわって銀行部門に対する税金投入を嫌い続ければ、結局、株価の持続的な反転は見込みにくい。日銀、FEDによる流動性供給や米国減税政策によって株価の緩やかな回復が生じる可能性はそれなりにあるが、そうしたシナリオが崩れた場合には、結局、銀行健全化に対する大規模な資金投入か、大型景気対策を要求されることになろう。株価が循環的な回復局面に入ると見られる年明けまでの約2ヶ月間に大きなシステム・ショックが起こるようなことがあれば、政策運営のスタンスは変わることになる。大規模な2次補正と日銀によるより積極的なマネタイゼーションの可能性を捨て切ることはできない。

 また、政府の行政改革推進事務局によれば、78の特殊・認可法人の改革に伴う国民負担が約5.5兆円になる可能性のあることが明らかになった。財政制度等審議会が作成した特殊法人の財務諸表「行政コスト計算書」(00年度)を基に算出されたものである。内訳は、累積欠損金から剰余金を差し引いた債務超過額が約3.9兆円、このほか引当金等の追加負担が約1.6兆円である。また、これとは別に、日本道路公団や本州四国連絡橋公団など道路四公団は将来発生する可能性のある債務も試算し、今後の交通量や金利動向により最大で約23兆7400億円の債務が償還不能になりかねないとしている。行政改革にも大きな財政コストが掛かるということである。

 重要なことは、政府(すなわち国民)にとって、将来、民間銀行健全化、行政改革(特殊法人整理)、あるいは景気対策、のいずれか、あるいはその全てについて、大きな財政負担が生じるということである。日本経済が持続的に上向くことがない限り、何らかの形での莫大な財政負担の発生は避けきれない。重要なことは、対応を先延ばしにすればするほど、そのコストが大きくなるということである。30兆円の国債発行額維持にこだわり過ぎるとツケは大きくなる。小泉政権には、そろそろ30兆円枠突破を潔く認める時が来たのではないか。

以 上  
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