2002年01月07日

白川 浩道
11月のマクロ経済指標は生産調整の長期化を示唆
鉱工業生産、在庫、在庫率表
就業者数、失業率表

 11月の鉱工業生産指数は、季節調整済み(90.9)で前月比1.8%の低下となり、予想比幾分弱めの数字となった。ゲーム機器、乗用車、半導体製造装置等の出荷減少が効いた。先行きについては以下の点を指摘したい。(1)在庫は3ヶ月連続の減少となり、水準ベースでは14ヶ月ぶりに前年割れ(−0.6%)となったが、在庫率は113.9と依然高水準にあり、出荷対比でみた在庫調整は予想比遅れ気味である。(2)内需(特に設備投資)が今後減速感を強めることからすれば、生産調整に目処がつくまでには、今後少なくとも8−9ヶ月間は要する可能性が高い。(3)鉱工業生産水準のボトムアウトがみられるのは、7−9月期後半以降とのシナリオは不変である(前年比ベースでのボトムは1−3月期)が、回復時期が後ずれするリスクが出てきた(現状では、生産指数<季節調整済>の動きについては、3−4月にかけて89程度に下落した後、7月頃までほぼ横這いでの推移になるとの見通しを立てている)。

 ここで、特に、財別にみると、資本財の出荷の落ち込みが一段と強まっていることから、資本財の在庫調整圧力の継続が生産活動回復の足かせとなる可能性に留意する必要がある。その意味では、今後、秋口にかけて予想される企業の設備投資の調整がどの程度深いものになるかが大変重要である。この点については、実は、雇用統計、毎月勤労統計といった家計所得に関する統計を読むことが鍵になる。

 11月の完全失業率(季節調整値)は5.5%と前月より0.1ポイント上昇し、3ヶ月連続で過去最悪の記録を更新した。もっとも、失業率の上昇は労働力人口が前月比で61万人も増加したことによるものである。実際、就業者数、雇用者数はともに前月比でそれぞれ53万人、15万人の増加となっており、就業人口の前月比減少が3ヶ月ぶりに止まった格好である。なお、非自発的な離職者数は123万人と過去最大となり、前年対比で29万人の拡大となった。今後、前年差で30万人程度の増加が継続するものとみられる。他方、11月の現金給与総額(毎月勤労統計)は所定外給与および特別給与の減少から前年比2.0%の減少となり、給与面での調整圧力の強まりを示した。しかしながら、7月から11月にかけて減少傾向を続けた所定内給与は前年並みとなり、11月は基本給部分への切り込みが一休みとなっている。

 このように、11月の雇用統計、賃金統計は、失業率の更なる上昇や給与減少幅拡大といった雇用・家計所得環境の厳しさを表面的には表したが、雇用者絶対数の減少や基本給の減少は足踏み状態となっており、雇用リストラが加速している状態にはない。97・98年の前回景気後退局面に比べて物価下落の度合いが大きいことからすれば、家計の実質所得の調整は企業所得減少ペースに比べて、不十分な状態に止まっていると言えよう。実際、実質賃金指数は98年中には2.0%の減少となったが、ここ数ヶ月の下落ペースは0.4〜1.0%といったところであり、就業者数の減少ペースが98年に比べて必ずしも加速していないとすれば、マクロでみた人件費の調整は98年当時に劣っている可能性がある。このことは、10−12月期には7−9月期以上の労働分配率の大幅上昇が生じるリスクが高いことを示唆する。所得分配面では、再び家計に有利に働いているということである。

 日本経済は、不景気になって企業の売上が減少しても、雇用コストが十分に削減されないといった「企業収益と設備投資に負担のかかる調整」を幾度となく経験してきた。そして、これが、日本経済の生産性が中期的にも低迷する要因となっている。今回の局面でも同じことが起きようとしている。短期的には、瀬設備投資の大幅な調整と生産調整の長期化が、中期的には生産性の低迷が生じる可能性があるということである。企業による、より思い切った雇用調整と前向きの労働代替投資が望まれる。

以 上  
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