2002年01月11日

白川 浩道
円相場は短期的には140円まで下落した後、120円超まで反発?

 12月19日の日銀の追加緩和策については、<1>銀行の流動性不足を解消する一方で、<2>銀行の資本不足や市場の信用収縮に対しては直接的な効果を持たない、と評価される。この結果、企業や個人のコンフィデンスに与える効果は限定的であり、当面は実体経済に対するサポート力もほとんど無視し得ることになる。すなわち、今回の日銀による追加的金融緩和策は、日本の成長率期待にはニュートラルである一方で、日米のベースマネー格差を確実に広げることになる(日本のベースマネー前年比は1−3月期には10−12月期の15%程度から17−20%にまで伸び率を高める見込みである一方、米国のベースマネーの伸びは当面、前年比8−9%での安定した伸びを継続する見通し)。この帰結として、円相場はファンダメンタルズ面から下落傾向を強めることになる可能性が高い。

 円ドル相場は、中期的には、日米のベースマネー伸び率の格差および成長率の格差を反映するとみられる。前回の景気後退局面で円相場が円安化したのは、97年11月頃から98年9月頃であり(97年11月平均は128円、ボトムは98年7月平均の144円)、為替市場は当時、98年の日本の景気悪化を織り込む展開となった。98年の日米の実質成長率格差は5.5%程度(米国4.3%成長、日本−1.1%成長)、ベースマネー格差は2%強(米国6.5%、日本8.6%)であった。一方、02年については、実質成長率格差については2%弱(米国0.5%成長、日本−1.4%成長、ともに当社予想)、ベースマネー格差については6%程度(米国9%程度、日本15%程度)と予想される。このように、02年を98年と比較すると、実質成長率格差が3.5%ポイント以上の大幅な縮小となる一方で、ベースマネー伸び率の格差が4%ポイント程度の大幅な拡大となる。すなわち、足元では、為替相場が主として日本の量的な金融緩和を背景に安くなる可能性が示唆されるとともに、円安圧力は98年当時とほぼ同程度である可能性が示される。その意味では、1ドル140円程度までの円安化は直近の日銀の緩和措置によって視野に入ることになった。

 ただ、こうした円安シナリオに対するリスクとして3つの要因を指摘しておきたい。それらは、<1>年後半における米国景気回復期待の後退、<2>不良債権処理積極化・産業再生を目的とした銀行への公的資本注入実施、および景気対策としての財政刺激策導入(02年度補正)の可能性、<3>年後半における日銀の緩和スタンス後退(<2>の措置を受けた当座預金ターゲットの減額)、である。この3つの要因が重なった場合には、日米成長率格差の見通しが変化するとともに、日米のベースマネー格差も縮小することになるため、相場の流れが一気に円高方向に変化するものとみられる。

 個人的には短期的には円安の一段の進行をみるが、新年度入り後は円高化のリスクがかなりあるとみている(1−3月レンジ127−140円、新年度入り後117−128円)。実際、98年には、秋以降、当局の政策対応期待が高まり(企業金融支援策、金融システム対策、景気刺激を柱とした緊急経済対策は11月に打ち出された)、円相場が反転、12月には平均で115円程度に値を戻している。今回の局面でも、同様の円高局面が生じる可能性がある。特に、円が一旦140円程度まで下落する場合には、その裏側で、企業の信用不安、金融不安が顕現化している可能性が高く、銀行への公的資本注入実施および景気対策としての財政刺激策導入(02年度補正)の蓋然性は相当高まっているとみられるからである。円安後に、政策対応で円高へ、といったシナリオが描きやすい。

以 上  
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