2002年01月24日

白川 浩道
市場は日銀に何を望むのか?

 来日した米財務省のオニール長官は、不良債権処理の必要性を指摘した上で、デフレ回避は金融政策の役目であり、財政政策に負わせるべきではないと発言した。さらに、円安誘導は不良債権問題の解決には繋がらないとして、安易な為替安政策にはノーを突きつけた。こうした中で金融政策あるいは日銀の政策にはどのようなオプションが残っているのであろうか。米国政府の意向に沿うためには、不良債権処理に伴うデフレ圧力を緩和すること、しかし円安を招かないこと、そして財政・産業構造改革に逆行しないこと、といった3つの条件を満たした政策を採用しなくてはならない。選択肢はかなり狭まる。デフレ圧力の直接的な緩和を考える場合には、財政出動のファイナンスか、円安誘導を目的とした量的緩和しかない。しかし、米国の意向をそのまま額面どおりに受け取れば、このいずれも採用できない政策である。そのように考えると、理論的に想定される日銀のオプションとしては、CP、社債関連オペの積極化、RCCへの間接的な資本注入、株式買取機構への資金拠出、といったものしかない。

 この3つのオプションのうち、日銀とすれば、CP、社債関連オペの積極化については「バランスシートの健全性の問題」を、株式買取機構への資金拠出については「資産価格形成へのバイアスの問題」を、それぞれ理由に抵抗を続けるであろう。その意味では、RCCの間接的な資本注入が日銀にとって最も望ましいオプションであるとみられるが、これは相手のある話であり、依然可能性は低い。日銀が供給する流動性については、「量」から「質」へ議論が移っていくことになるが、「量」に拘泥する日銀と、「質の変化」を求める政府(米国政府も含めて)との間で、激しい主導権争いが生じることが予想される。現段階では、1−3月期中に、日銀の政策の方向性が変わる可能性は低い(量に拘泥する日銀が優位な立場を維持できる)とみているが、年度明けからは、日銀法改正論議等に絡んで、日銀が守勢に転じるものと読んでいる。4−6月期には大きな政策変更が待っているかもしれない。

 哲学のない産業構造改革、不良債権処理策に対して、市場の評価は依然として厳しい。政府は、これまでの想定に比べて幾分厳し目の不良債権処理策と、その下での公的資本再注入を早急に固めざるを得ないであろう。しかし、その一方で、株価が大きく浮上する力もないとみられ、株価の低迷が続けば、日銀への圧力が継続する。上記で指摘したように、RCCの機能強化が進まない状況で、日銀が非正統的、非伝統的な政策を採用することを拒否し続けることができるのかどうか、が市場の大きな焦点となる。

 拒否できると考えれば、それは、「量的緩和の拡大が継続するシナリオ」を想定していることであり、円安、債券安(さらにはトリプル安のリスク)をみていることになる。また、このシナリオでは、不良債権企業の信用リスクの低下といった効果は限定的にしか生じないため、株式市場では、輸出関連株と国内非製造業(高負債企業)との間で二極化が進むことを想定せざるを得ない。他方で、日銀がCP・社債関連オペの積極化や、買取機構を通じた株式市場介入に手を出すことになると考えれば、円安、債券安の連鎖を必ずしも想定する必要はない。そして株式市場について言えば、二極化現象の急激な縮小といったシナリオになろう。市場は日銀にどちらを望むのであろうか。

以 上  
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