2002年05月02日

白川 浩道
短期的には円高?

米国の1−3月期実質GDP成長率は前期比年率+5.8%となり、市場予想を上回った。しかし、こうした高い成長率は、在庫調整の進展によって一時的に嵩上げされたものであることが確認された。実際、5.8%の成長のうち、3.1%ポイント相当は、民間在庫投資の減少幅の縮小によるものであり、最終需要は、耐久財消費の減速を主因に前期比2.6%増と10−12月期(+3.8%)からスローダウンした。4−6月期については、個人消費がさらに減速するほか、企業の設備投資も回復にまでは至らない(ゼロ成長か?)とみられることから、3%程度への成長鈍化は避けられまい。さらに、心配なのは、年後半の米国経済の行方である。3月以降、米国経済データは弱含む傾向にある。4月の製造業ISM(旧NAPM)指数は53.9と3月の55.6から1.7ポイントも低下した。生産に関する指数はほぼ横ばいであったが、新規受注の指数が4ポイント以上の反落となった。ISMの水準そのものは米国の製造業が回復過程にあることを示唆してはいるが、在庫積み増しが一旦終了した後の持続的な生産の回復に関しては、その蓋然性が低下してきていると読むべきであろう。

金融市場は、在庫循環に支えられた1-3月期の高い米国の成長率が持続可能ではないことを既に織り込んでいる。しかし、それでもなお足元では、米国経済に対する一段の悲観論が台頭しやすい状況にある。なかなかブレークスルーの見えない中東情勢、原油価格高止まりのリスク、回復力の弱い企業の設備投資意欲、株価に遅行して始まるリスクがある不動産価格の下落、といった具合に、経済のダウンサイド・リスクは事欠かない。

市場の不安感を反映して、為替相場のドル安・円高傾向が強まってきた。125円を大きく超える円高が生じれば、実弾での為替市場介入が行われる可能性が高い。米財務省オニール長官は市場介入による効果を疑問視したと伝えられているが、125円を大きく超える円高となれば、日本政府としては不快感を表明せざるを得ないであろう。ただ、単独の為替市場介入であれば、仮にそれが事実上の非不胎化介入であったにせよ、為替相場への効果は期待薄である。すなわち、円高基調を止めようとすれば、日本は、より強いメッセージを出す必要が出てくるであろう。それは、やはり日銀による中長国債買い切りオペの増額であると考える。レポ・ベースでの短期の資金融通ではなく、国債買い切りによって長期債価格をサポートすることで実質長期金利を低下させ、その反射的な効果として円相場の軟化、あるいは円高阻止を狙うしかないであろう。

米国では、年後半の内需の回復力に対する不安感が高まれば、製造業を中心に企業サイドからはドル軟化を望む声が強まるものとみられる。ブッシュ政権としても、こうした声を無視するわけにはいかないであろう。今年は中間選挙の年であるからだ。従って、個人的には、ブッシュ政権における「ドル高維持政策」は徐々に精細を欠く可能性が高いとみている。この結果、日本政府としても、日銀による国債買い切りオペ増額といった措置は採れたにせよ、例えば、日銀による外債購入といった、露骨な円安誘導を行うことは困難であろう。結果的に、円相場は、日銀の量的緩和の追加や為替市場介入があったにせよ、今暫くは緩やかな円高傾向を辿る可能性がある。しかし、日本経済の足腰は極めて脆弱である。円高傾向が経済ファンダメンタルズと乖離して長続きする可能性は低い。年度前半が円高傾向になれば、年度後半には円安が待っているであろう。

以 上  
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