2002年06月17日

白川 浩道
ドル安の恐怖?

4月の日本の経常収支は1兆846億円の黒字、前年比21.7%増となった。季節調整済みの計数を用いてGDP比を計算すると約2.8%となる。1−3月の経常黒字のGDP比が3.1%であったから、トレンド的にはGDP比3%程度の黒字が定着しつつあるといえよう。ここで改めて注意しておかなくてはならないのは、日本の経常黒字が拡大基調に入ったことで、米国の経常赤字との格差が広がりつつあることである。米国の経常赤字のGDP比率は足元で−4%であるとみられることから、両国のGDP対比でみた経常収支インバランスはいまや7%ポイントに達しようとしている。下のチャートをみて、改めて感じるのは、両国の経常インバランスがGDP比でみて趨勢的に拡大し、既に7%ポイントといった既往ピーク(00年Q2-Q3)に迫ろうとしているのに、依然として、円ドル相場の大幅な修正が生じていないということである。資産バブルによる空前の好景気の下で、米国の財政収支が黒字化するに至ったことが1つの大きな背景であるが、財政収支の悪化がみえてからも、米ドル相場の大幅な調整は起きていない。これは、資産バブル崩壊後も、米国における労働生産性の持続的な拡大期待等、米国経済に対する信頼感が大きく崩れていないことが、その根底にあるとみられる。しかし、そうした市場の楽観は、ユーフォリアに過ぎないかもしれない。市場が米国の長期的な経済力に自信を失えば、「インバランスの縮小」を目指して、米ドルは下落の一途を辿るリスクもないではない。

それでも、円相場は、短期的には、小康状態を取り戻している。足元では、米ドルから離れた資金が基本的にはユーロ圏に流れ込んでいるためである。しかし、円高リスクが低下したわけではない。上記でみたように、日米両国の経常収支インバランスは拡大傾向にあり、これは簡単には縮小しそうもない。日本の内需の回復力は弱いこと、米国では財政赤字の拡大傾向が始まっていること、がその基本的な背景である。ドル安・円高が一気に進むリスクは無視し得ない。ドル安(そして米国債安)・円高への対抗は、短期的には、為替介入となろうが、為替相場の調整が構造的なインバランスの調整を背景としたものであれば、介入のみで相場の動きを止めることはできないであろう。日本の当局は、米ドルの一段の下落に備えなくてはならない。円高によって、製造業の収益回復力が低下し、これが設備投資に下押し圧力を与えれば、日本経済は年度後半にも失速するリスクがある。ドル安・円高が、日銀によるアグレッシブな国債買い切りオペに繋がる可能性は依然それなりに高いと読む。

以 上  
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