2002年07月08日

白川 浩道
政府・日銀は様子見へ?

政府・日銀の経済政策運営が、当面、様子見モードに入る可能性が高まった。背景は2つある。1つめは、カナダ・カナナスキスで行われたサミットで米国経済への懸念が十分に表明されず、目立った対日景気拡大圧力も生じなかったことである。日米欧の3極は、いわゆる「ビナイン・ネグレクト」(いい意味での無関心)の状況にある。2つめは、6月日銀短観における業況判断の大幅改善である。輸出、生産、企業センチメントの循環的な回復が確認されたことで、政府・日銀は「景気底入れ宣言」を正当化するムードにある。

日銀は、設備投資等最終需要面での回復感が依然乏しいことを理由に、当座預金残高ターゲットの削減に踏み込むことは当面あるまい。しかし、政府から、更なる中長期国債買い切りオペの増額を迫られる可能性も低下した。円高進行や株価の低迷は引き続き懸念材料ではあるが、輸出、生産、企業センチメントの好循環が切れるまでは、様子見となる可能性が出てきたと言えよう。これまでは、年内に、日銀による中長期国債買い切りオペが5000億円程度増額されるものと予想してきたが、その確率は大きく低下した。もっとも、これは、循環的にみて、量的緩和のタイミングが後ズレしたことを意味しており、来年前半に追加緩和が実施される可能性は50%程度あるものとみておくべきであろう。

財政政策は、緩やかな緊縮を目指すことになろう。現状では、来年度の予算規模は今年度対比で3−4兆円増加する見通しにあるが、財務省は増額規模の抑制を目指すであろう。さらに、税制改革もネットで実質増税といった方向性が維持されるであろう。

このように、循環的な景気回復が視野に入る下で、財務省、日銀による、内需サポート策が打ち出される可能性は、短期的には低下した。日銀による追加緩和策が見送りとなり、金融政策が現状維持となれば、来年度の景気見通しには下方リスクを生じる。日本の内需に自律的な回復力はない。円高の進行の下で、追加的な政策サポートがなければ、景気の山が低くなり、回復の期間が短期化することは避けられないであろう。

米ドル安は構造的なものであり、ドル安傾向が簡単に反転する可能性は低いと考えている。その意味では、政府・日銀が、積極的な内需拡大政策を打ち出さざるを得なくなるのは、時間の問題といえる。循環的な回復期待から、当局が、様子見スタンスを強めれば強めるほど、政策転換のタイミングは早まるであろう。シナリオは2つである。景気サポート型の政策運営を打ち出すことで、景気の回復がより持続的なものになるか、あるいは、現状維持の政策で景気が早期にスローダウンし、結局、景気刺激に追い込まれるか、である。ポイントは2つ目のシナリオの確率が足元で急激に高まった(40%対60%)ということである。

以 上  
TEL: 03-5297-7311 - FAX: 03-5297-7314
Copyright © 2000 CMD Co., Ltd. All rights reserved.
Prev Index Next