2003年02月06日

白川 浩道
外債かETFか

日銀の流動性政策は転機を迎えつつあると言えるのではないだろうか。キーワードは「量から質へ」である。中長期国債を年間14兆円超のペースで購入し、20兆円もの水準の当座預金を維持しても、株価は上昇せず、目立った円安が演出できているわけでもない、というのが、政策担当者の率直な印象であろう。更なる財政出動が必要という議論を牽制したいとすれば、答えは1つ。日銀の資金供給の方法を変えて行くしかないのである。

日銀の資金供給の方法が変化していくとすれば、その方向性は大雑把に言って2つしかない。1つは外債の購入であり、もう1つはETFの購入である。これは、日銀が、市場に替わって、為替変動リスク、ないしは株価変動リスクを採っていくということである。その考え方の基本は、市場のリスク・テーク能力が相対的に劣後する部分に関して、日銀が積極的にリスクを採るというものである。いわば、リスク仲介の補完と言える。

日銀による外債購入の可能性が上昇しているとみられる背景には2つある。1つは、当局が1月中に行った、不可解な為替市場への覆面介入である。同介入は、通常の平衡操作というよりも、為替介入を利用したベースマネー供給の色彩を帯びている。2つめは、米国財政赤字の拡大が見込まれることである。03年度、04年度と3000億ドルを超える財政赤字の発生が予想される中で、米国当局は長期金利の上昇を抑制するという観点から、従来に比べて、日銀による外債購入に前向きになる可能性がある。

日銀によるETF購入については、株式市場の需給改善策として、一部与党議員の間で根強い支持があるが、銀行から個別株の購入を決定した日銀としても、「銀行のバランスシート健全化を更に後押しする」との位置付けが可能であることから、現実性の低い政策ではない。さらに言えば、世界中の中央銀行コミュニティーには、「中央銀行であっても、一金融機関として運用資産のリスク分散を図るべきである」という考え方が古くから存在しており、日銀とすれば、野放図に国債を購入するよりも、ETF等の購入に踏み切った方が、他国の中央銀行には説明しやすいという事実もある。

外債購入、ETF購入ともに、手続き面、すなわち、日銀法との絡みでなかなか困難ではないかとの見方があるが、現実にはこの問題はあまり大きくない。詳しくは述べないが、外債購入、ETF購入ともに、基本的には、政府(財務省)の認可があれば、現行の日銀法でも可能なオペレーションである。

さて、こうした「量から質へ」といった方向性の中で、日銀総裁人事との関係はどのようにみておけばよいのであろうか。それは、基本的には、「中原氏であれば外債」、「福井氏であればETF」である。中原氏は基本的に量で責めるタイプであるが、その背後には円安誘導の考え方もある。他方で、福井氏は、構造改革派、そして「日銀としてのリスク分散を重視するタイプ」である。ただ、残念ながら、両氏ともに、新総裁に選ばれるのに必要な条件を全てクリアーしておらず、依然として決め手はない(当社では両氏の間では福井氏の確率が相対的に高いとみている)。

新総裁の任命は、基本シナリオでは、2月20日(パリのG7会合の直前)が1つの目処になるはずである(しかし、さらに月末頃までずれる可能性も完全には排除できない)。いずれにせよ、新総裁の任命とほぼ同タイミングで、外債購入か、ETF購入か、といった議論が加速するであろう。期末までに実際にオペレーションが可能であるかどうかは依然50−50であるが、方向性を打ち出すところまでは行くものとみておいた方が良い。ただ、政府とすれば、債券市場を壊すことは避けたいと考えるであろうから、外債購入、ETF購入の方向性が打ち出される場合には、3月の決定会合(4−5日)で輪番オペの2000億円の追加増額は実施されると読むべきであろう。

以 上
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