2003年08月14日

白川 浩道
6四半期プラス成長の評価

4−6月期の実質GDP成長率は、市場予想を上回る、前期比+0.6%の伸びとなり、2002年1−3月期以来、6四半期連続のプラス成長を達成した。しかし、こうした6四半期連続のプラス成長を一言で評価するとすれば、「デフレ的な色彩の濃い回復」となる。民間投資の回復力の弱さ、名目成長の低迷がそうした特徴を端的に示している。日本経済が、デフレ的な回復から脱却し、真の意味で持続的な経済成長に復帰するためには、個人消費の回復がなんとしても必要であると考える。

主なポイントは以下のとおりである。

  1. 実質GDPは過去6四半期に3.4%成長した。年率換算では2.3%の成長である。需要項目別の寄与度をみると、個人消費、設備投資、純輸出がそれぞれ1%程度の寄与となっており、バランスの良い経済成長を達成していることがわかる。

  2. 面白いことに、二番底から脱出した99年1−3月期から00年7−9月期にかけての6四半期では、実質GDPは3.7%成長しており、ほぼ今回の成長と同様のペースでの成長を達成していた。逆に言えば、今回の景気回復は、実質ベースでみる限り、ITバブル期の99−00年の景気回復に匹敵する伸びとなっているということができる。

  3. しかし、前回局面の回復と比べると、今回の回復は、「デフレ的回復の色彩」を強めていることがわかる。すなわち、今回の回復では、[1]企業のデフレ期待の根強さを反映して企業設備投資の回復力が弱い、[2]そうした設備投資の回復力の弱さから(SARSの影響もあるが)輸入の伸び率が低い(GDPを押し上げ)、という特徴がある。国内民間投資(企業設備投資、在庫投資、住宅投資の合計)の寄与度は、今回の局面では+1.4%に過ぎず、前回の+2.3%から大きく水をあけられている。

  4. こうしたデフレ的な色彩の濃い景気回復は、名目成長率の低迷にも顕著に現れている。前回局面の6四半期では、名目GDPが+0.6%拡大した一方、今回の局面では0.2%の縮小となっている。しかも、名目ベースでプラスの寄与となったのは、民間在庫と、輸入の減少に助けられた純輸出のみである。前回の局面で、企業設備投資と住宅投資がプラスの寄与となった状況とは大きく異なる。

  5. このように、足元の6四半期の実質プラス成長は、日本経済にとって明るいニュースではあるが、デフレ的回復の色彩が強まっているという事実には留意しなくてはならない。乗数効果が高いとみられる民間投資に力がないことは、引き続き、懸念される。

  6. 先行きを考える上での鍵は個人消費が握っている。日本経済がデフレ的な回復から脱却し、真の意味で持続的な経済成長に復帰するためには、小売業やサービス業といった国内非製造業の業況や収益が十分に改善する必要がある。そして、その結果として、民間投資が盛り上がることが不可欠である。

  7. 個人的には、その個人消費に関して、最近、徐々に楽観的な見方をしている。その最大の理由は、雇用環境が予想以上に改善する可能性が出てきているからである。労働市場の需給環境は、高齢化の進展、経済の高度化に伴う熟練労働者の不足、若年層の就業意識の変化等によって、徐々にではあるが、タイト化する様相を示している。こうした労働市場の変化が、賃金や消費者物価の下げ止まり期待をもたらせば、消費性向の上昇傾向が実現する可能性がある。また、マクロ経済政策によっても消費態度が影響を受ける可能性もある。産業構造改革路線の後退、金融機関の不良債権処理に優しい政策が採用され続けるとともに、日銀が、消費者物価がプラス2%程度になるまで思いきった金融緩和を継続する、というコミットメントを行えば、雇用確保(ジョブ・セキュリティ)期待の向上とデフレ期待の後退によって、消費態度がより前向きなものとなる可能性がある。

  8. 個人消費は、GDP統計からみる限り、今回の局面でのパフォーマンスは、前回局面に比べて「良好」である。日本経済が持続的な経済成長のパスに復帰するのか、あるいは、再び失速するのか、その鍵を握る個人消費の先行きを読むことが極めて重要であろう。

実質及び名目GDPの回復パターン
以 上
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