2003年09月19日

白川 浩道
第2のプラザ合意で資産インフレへ?



8月の米国CPI(コア)前月比は+0.1%の上昇に止まり、市場予想(+0.2%)を下回った。前年比では+1.3%となり、7月の+1.5%から0.2%ポイントもの低下となった。特に、財価格(コア)は昨年9月以降、12ヶ月連続の前月比マイナスとなっており、前年比では−2.2%と既往最大のマイナス幅となった。米国における財(商品)価格のディス・インフレ傾向には、改善の兆しがないどころか、むしろ悪化する様相を呈している。米国小売業界における需給ギャップの拡大や米国消費者のデフレ志向の強まりが示唆される。米国経済は日本に遅れること約10年、これからデフレに苦しんでいくことになるのではないだろうか。

こうした状況で、米国は、現在の超低金利政策を長期間に亘って維持せざるを得まい(来年いっぱい金融引き締めに転じることは不可能であろう)が、加えて、米国政府は、ディス・インフレからの脱却を狙った米ドル安誘導に動き出す可能性がある。週末のG7会合を経て、円相場の水準調整(切り上げ)に関する議論が本格化する確率が上昇したと言えよう。

今後来年にかけて、日本政府がある程度の円高を受け入れざるを得なくなるとして、その場合の政策面での切り札は何か。それはずばり、日銀による物価参照値の導入――望ましい物価上昇率は1−2%であり、実際の消費者物価が1%まで上昇するまでは金融引き締めは実施しないと明言――であろう。現在の財務省、日銀におけるマクロ政策の優先課題は、財政構造改革支援と不良債権処理の加速の2点に尽きる。円高を受けて、財政出動という発想は出てこないであろう。

日銀には、量的緩和の追加といったこれまでの政策の延長線上ではなく、個人や企業の期待形成により直接的に働きかける「新たな政策フレームワーク」が要求されることになるのである。米国がディス・インフレに悩めば悩むほど、日銀には、新たな政策措置が要求される。米国CPIの前年比低下によって、日銀による物価参照値導入、さらにはインフレ・ターゲット導入の可能性が高まったと考える。加えて言えば、日銀がETFやREITの購入に踏み切る可能性も再び上昇した。

日本政府は、量的金融緩和の継続→円高の回避→外需主導の景気回復→デフレ期待の修正、といったシナリオから、日銀による物価参照値(インフレ目標値)の導入→日銀によるETF購入等直接的な資産市場支援→インフレ期待の醸成→内需主導の景気回復、といったシナリオに軸足を移さなくてはならないのである。

プラザ合意によって円相場が切り上げられ、日銀の金融緩和が大きく拡大、これが1980年代後半の資産バブルと空前のバブル景気をもたらした。プラザ合意は1985年9月22日、今から丁度18年前である。阪神タイガースの優勝も18年前。19年目の巡り合わせで、第2のプラザ合意が行われ、それを機に日本経済に再びインフレ期待が戻ってくることになるのではないだろうか。

以 上
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