2003年10月15日

白川 浩道
設備投資から個人消費へ



国内需要におけるリード役が設備投資から個人消費にシフトしつつある。予想どおりの動きである。8月の機械受注統計は、製造業による発注がピークアウトしたことを確認した。他方で、景気ウォッチャー調査によれば、家計支出関連の業況判断は着実に上向いてきている。家電、自動車関連といった耐久消費財関連での改善が著しい。また、雇用情勢の改善、デフレ期待の後退も続いている。従来の景気循環とは異なった、雇用・消費循環がみえてきたと考えて良いだろう。

もう少し詳しく解説する。8月の機械受注は前月比−4.3%となり、市場予想に比べてかなり悪い数字となった(製造業前月比−5.7%、非製造業前月比−3.7%)。しかし、これは驚くにはたらない。もともと製造業のスローダウンは予想されていたことである。製造業による発注は既に4−6月期で6四半期連続の拡大となっており、7−9月期から下降局面に入っても不思議ではない。逆に7−9月期もプラスであれば、これはポジティブ・サプライズである。半導体製造装置を除けば、製造業からの発注は緩やかな下落トレンドに入ったと考えられる。

他方で、非製造業については、やや回復が鈍いという印象は否めないが、製造業とは異なり、今後数四半期、回復過程が継続するものと予想される。6月に高い伸びをしたことによる、いわゆるゲタを履いている面もあるが、非製造業(コア)の7−9月期の発注は前期比+4−5%のプラス成長となる可能性が高い。通信、運輸、卸・小売業等が機械投資を牽引する見込みである。なお、非製造業に設備投資の主体が移っていく中で、内容的には、非情報通信関連から情報通信関連機器に需要対象が着実にシフトしてきている。通信機器が盛り返しているほか、企業のパソコン需要も緩やかではあるが、回復傾向にある。

そうは言っても、全体としてみれば、設備投資回復の循環的なピークが近づいているのも事実である。非製造業からの発注の回復が、製造業からの発注の減少を相殺することは予想しずらい。実質GDPベースでみた企業設備投資の伸びが今年度から来年度にかけてスローダウン(+8%程度から+2%程度へ)するというシナリオは変わらない。

しかし、設備投資にかわって、個人消費が需要回復の牽引役となる姿がはっきりとしてきた。足元9月の景気ウォッチャー調査によれば、家計関連の現状判断DIは46.2ポイントとさらに改善し、昨年4月来の水準に達した。家電、自動車関連が特に好調である。さらに、同調査では、雇用関連DIの改善が著しい。新規求人の回復を指摘する声が多く、労働市場における需給改善が鮮明になってきたといえる。

さらに9月の月次消費動向調査(東京地区)によれば、消費者のデフレ期待は一段と後退している。ヘッドラインの消費者態度指数は43.2となり、3ヶ月ぶりに反落した(前月は43.7)。しかし、こうした下落のうち、およそ6割は消費者のデフレ期待が後退したことによるものである(デフレ期待が後退すると、消費者態度指数は悪化するというのが統計上の約束になっている)。重要なことは、消費者のデフレ期待は2002年1月をピークに着実に後退しており、直近9月の指数は1999年11月以来の低さである。つまり、消費者の物価に対する感覚は、ITバブルが真っ盛りであった、約4年前の1999年秋まで戻ったということである。消費者のデフレ期待は既に大きく変化したといって良いだろう。

為替円高によって、今後、消費財価格に再び下押し圧力がかかる可能性は否めない。しかし、最近の消費者の物価期待の変化は、雇用環境の趨勢的な改善による賃金の下げ止まり期待を反映した面が大きいと考えられる。デフレ期待が復活する可能性は低いだろう。そして、デフレ期待が大きく修正されることによって、個人消費が後押しされることになるだろう。デフレ期待によって支出を抑制していた消費者が「物価上がる前に」支出を拡大させようとするからである。既に、個人消費は動きだしているが、来年にかけて、雇用環境の改善、デフレ期待の修正を背景に、一段と個人消費が上向いている可能性が高いと読む。

以 上
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