2004年01月27日

塚崎 公義
来月のG7について


 来月開かれるG7が注目されています。 昨年9月のG7では、円相場への介入を牽制したと読まれかねない表現が盛り込まれ、円高が進みましたが、今回はどうなるのでしょうか?

 通貨問題を考える際の背景となる実体経済の状態は、日米欧ともに9月時点に比べて改善しています。 米国は景気が好調に推移しています。 雇用の回復が遅れていることは気になりますが、株価が上がっていて、企業収益も回復していますから、ブッシュ大統領の支持基盤である富裕層は満足度を増していることでしょう。

 欧州も景気は底打ちしています。 ユーロ高にもかかわらず米国などからの受注は好調です。 日本経済もおおむね順調に回復を続けています。 対ドル相場は円高ですが、円の対ユーロ相場が円安になっていることで、悪影響はある程度緩和されています。 円高にもかかわらず、アジア向け輸出が順調に増えていることも、明るい材料です。

 こうした中で、重要なことは、為替レートに関しても、日米欧ともに大きな不満はないということです。 米国にとっては、ドルが安くなっても輸入物価も上がらず、株価も下がっていませんから、これまでのドル安は心地よいものであったはずです。 いま少しドル安が進めばさらによいのかもしれませんが、そのためにはドル安が株価下落や金利上昇を招くリスクを覚悟しなければなりませんし、イラク問題で米国を支持してくれている「頼れる同盟国である日本」を困らせることも覚悟しなければなりません。

 欧州では、ECB(欧州中央銀行)が物価の安定を非常に重視しているので、基本的にはユーロ高を歓迎する傾向があります。 各国政府にはユーロ高が景気に悪影響を及ぼすことを懸念する声もありますが、その声は比較的穏やかなものにとどまっています。 ユーロ高による物価の安定がECBの金融政策を緩める(一層緩和するか、あるいは次の引き締めを遅らせる)方向に働くことのプラス効果や、ユーロ高により輸入品が安く買えるようになることのプラス効果などを見込んでいるためでしょうか。

 欧州では、経済的な損得を越えて、通貨が強いことは誇らしいことだと考える人も多いようです。 とくに、せっかく導入したユーロがどんどん安くなっていくのではユーロ導入が失敗だったという挫折感が広がりかねないので、ユーロがある程度高くなることが満足感につながっている面もあるのでしょう。

 そもそも欧州にとっては、現状程度のユーロの水準は、それほど問題になる水準ではありません。 過去20年のユーロ(およびECU)の対ドルレートは、レーガノミクス時とユーロ誕生後を除けば、おおむね現状水準で推移していたからです。

 もっとも、これだけ為替の変動幅が大きく、変動が急激であれば、やはり欧州経済へのマイナスの影響は避けられませんので、急激なユーロ高を懸念する声は増えつつあります。 こうしたことを総合的に考えると、「為替の水準は現状でかまわないから為替を安定させて欲しい」というのが(さまざまな立場の人がいるでしょうが、総体としての)欧州の立場だと言えるでしょう。

 日本にとっては、いま少し円安の水準が好ましいとは思いつつも、世界最大の経常収支黒字国が円安誘導を行うわけにもいきませんから、せめて介入によって円高を防いでいる現状を黙認してほしいというのが本音でしょう。

 こうしたことを考えると、現状維持をはかることで日米欧ともある程度の満足が得られることになるわけです。 お互いに譲り合って何らかの合意をしようとすれば、現状維持がもっとも問題が少ないように思います。 「三方一両の損」よりも望ましい「三方一文(いちもん)の損」といったところでしょうか。

 こうした状況下、G7の共同声明はどのようなものとなるのでしょうか。 第一に、為替の現状レベルを容認するとのメッセージが盛り込まれるでしょう。 少なくともドル安誘導ととられかねないような表現は回避されるはずですし、これ以上のドル安は望ましくないというニュアンスもはいるかもしれません。 もっとも、ドル安是正といった話にまではならないでしょう。 つぎに、急激な為替の変動は望ましくない旨のメッセージが盛り込まれるでしょう。 日本の介入を黙認するというメッセージも読み取れるかもしれません。 もっとも、為替安定ための協調行動については、米国が難色を示すでしょうから、そこまで踏み込んだ内容にはならないでしょう。 最後に、米国の双子の赤字を縮小すべきというメッセージが添えられるかもしれませんが、これは実効性のない飾りといった位置づけになると思います。

 





以 上

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