2005年01月04日

塚崎 公義
それでも景気は拡大する(1)



(はじめに)
 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。今回は、年初にあたり、今年の景気について考えてみましょう。


(景気指標の急変)
 昨年の夏場まで絶好調を続けていた景気指標は、秋以降一転して悪い数字が並ぶようになりました。 実質GDP成長率は4−6月期と7−9月期が続けてゼロ成長となりました。 鉱工業生産指数も機械受注(船舶と電力を除く民需ベース)も秋以降に明確な悪化を示しています。 これをもって、景気がすでに後退をはじめたと考える人も増えています。 たしかに、上記の数字だけを見ると、そう考える方が自然なのかもしれません。
 しかし、筆者は結論として現在でも景気は拡大トレンドの上にあり、今後とも順調に拡大していくものと予測しています。 最近の景気指標は一時的な振れ(踊り場と呼ぶ人もいるようです)であるというわけです。 そう考える根拠は、「景気はひとたび回復をはじめると、そのまま回復を続ける性質がある。 このトレンドを反転させるような力が働かない限りは回復、拡大を続けるはずであるが、今次局面においてはそうした力が働いていない」ということです。
 昨年の後半には、景気に逆風が吹いていたことは確かですが、いずれも弱い逆風でした。 原油価格は高騰しましたが、日本経済は原油依存度が低いためにインパクトは比較的軽微でしたし、何よりも原油高がインフレ懸念を通じて金融引締めを招くということがありませんでしたので、石油ショックの時とはまったく影響度が異なっていたわけです。
 米国経済が減税の一段落により若干軟調になり、中国経済の過熱感が弱い引締め(マクロコントロールと呼ばれています)により若干緩和しましたが、いずれも小幅なもので、景気が後退をはじめたといった大袈裟なものではありませんでした。
 世界的なシリコンサイクルが下降局面にあることもマイナス要因ですが、これは半導体関連産業についてのことであって、変動幅こそ大きいものの、経済に占めるウエイトはそれほど高くないので、影響を過大視する必要はないでしょう。
 オリンピックに伴うデジタル家電ブームの反動、猛暑効果の反動、台風や地震の影響といった要因も指摘されますが、経済全体に与えた影響は限定的であったようです。


(逆風は止まる)
 今後については、こうした逆風は止み、一部分は順風に変わることが期待されます。 原油価格は、すでにピークアウトしたものと見られます。 下がらないまでも安定してくれれば、前期比でみた悪化要因にはならないでしょう。 米国経済は、引き続き「そこそこ」の状態での推移が見込まれ、景気が下降トレンドをたどるという可能性は大きくないでしょう。 中国経済も、引締め策は採られていますが、景気が後退するところまで引締めが徹底されることにはならないと思います。 米国と中国の景気が一時的な減速から巡航速度に戻れば、日本経済の前期比にとっては改善要因と言えるでしょう。 そもそも内外成長率格差から考えると、日本の外需はプラスとなるのが自然であり、7−9月期の外需マイナスという状態は続かないと考えておくべきでしょう。
 シリコンサイクルについても、それほど深刻な落ち込みにはならず、遠からず回復に向かうだろうと言われています。 また、台風や地震の影響については、反動増が見込まれます。
 こうしたことを考えると、昨今の経済指標に弱いものが多いからといって、そのまま景気が下降していくと考える必要はなく、むしろ一時的な調整を経て再び拡大トレンドに戻る可能性が高いと言えるでしょう。
 なお、このところ為替相場が円高に振れていますが、円の切り上がり幅が限定的であること、日本製品の競合相手である欧州の通貨が円以上に切りあがっていることなどを考えると、影響は限定的なものにとどまると思われます。


(日本経済復活の好影響)
 バブルが崩壊してから15年が経過し、バブルの後遺症に悩んできた日本経済が、後遺症から解放され、押さえつけられてきた需要が表面化してきています。 こうした大きな流れがあることも、景気回復を持続させる力強い要因となっています。
 バブル崩壊以降、企業は「設備、人員、負債の過剰」を抱え、設備投資や人員採用を控え、負債の返済に注力してきました。 10余年にわたる努力の結果、こうした過剰は概ね解消されましたが、振り返ってみると設備は古くなっており、正社員の年齢構成も歪んでいるわけで、潜在的な設備更新需要、新卒採用需要は高まっているはずです。 こうした中で企業収益が順調に拡大してれば、潜在的な需要が顕在化していくことが期待されます。
 銀行の不良債権問題も峠を越え、銀行経営が攻めに転じたと言われています。 不良債権問題が貸し渋りをもたらしていたのか否かは議論がありますが、少なくとも銀行員のマインドが積極化したことは景気にとって明るい材料だと言えるでしょう。
 都心の地価が反転をはじめたのも明るい兆しと言えるでしょう。 「現在の価格ならば買いたいが、来年まで待てば更に値下がるだろうから、買うのは来年にしよう」と考えて待っていた需要が「もう下がらない」と思ったところで一斉に出てくるかもしれません。
 昨今の景気については、90年代後半の超悲観論から解放されたことの影響が大きいことにも留意が必要です。 「米国的なものは素晴らしく、日本的なものは遅れているので、日本経済に明日はない」といった論調がまかり通っているときには、設備投資や耐久消費財購入といった需要は手控えられがちです。 「景気は気から」と言いますから、日本経済についての認識が変化したことの影響も大きいと考えるべきでしょう。
 今後の懸念材料としては、政府が財政再建を焦って「税収という金の卵を得ようとして景気回復という鶏を殺してしまう」という可能性、急激な円高が進んでデフレが再燃してしまう可能性、などが挙げられます。 もっとも、政府も過去の経験から学んでいるために、増税は景気を睨みながら慎重に進めていくでしょうし、デフレを再燃させるような急激な円高には介入で対抗するでしょうから、結論的には景気が失速するような事態には陥らないと考えてよいように思います。
 今ひとつ、海外経済の展開についても注意深く見ておく必要があるでしょう。 米国や中国の景気が大きく鈍化するとは思われませんが、米国や中国の景気が少しでも鈍化すると日本経済に大きな影響を与えるというメカニズム(おまけ2、3御参照)が働いている可能性もあるからです。

 

 

 それでも景気は拡大する(2)へ続く >>


以 上

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