2005年03月01日

塚崎 公義
ソフトパッチを脱した日本経済


 

 

 日本経済は、昨年後半に弱めの経済指標が相次ぎ、GDPも3四半期連続のマイナス成長を記録しました。 しかし、景気はすでに一時的なソフトパッチ(踊り場あるいは足踏み状態)を超えて再び順調な拡大軌道に乗っている可能性が高いと思われます。

 まず、昨年後半のソフトパッチは、見た目ほど深刻なものではなかったようです。 たとえば鉱工業生産指数は不冴えですが、統計上の問題から実態よりも弱く見えている (IT関係の一部が金額で集計されているために値下がりが生産減と表示されてしまうなど) 面も大きいですし、消費も災害や暖冬などの影響を除けばそれほど不振であったとは言えないでしょう。 加えて、昨年前半の輸出が実力以上に伸びていたために経済活動が嵩上げされていて、 これが本来のトレンドに戻る過程で前期比で見た生産などが伸び悩んでいるように見えているという面もあるようです。

 一方で、景気拡大を支える材料は健在です。 企業収益は好調を持続していますし、在庫も低水準を維持しています。 倒産は減りつづけ、有効求人倍率も失業率もおおむね順調な改善トレンドを続けています。 米国経済は一時的なソフトパッチを抜け出して概ね順調な拡大軌道に復帰していますし、 中国の引き締めも本格化せずに経済の順調な成長が続いているようです。 為替相場が安定的に推移していることも景気にとって好材料だと言えるでしょう。

 大きなトレンドとして日本経済が失われた10年から脱却していることも支援材料だと言えるでしょう。 金融危機は過去のものとなり、企業の抱える設備、人員、負債の過剰は適正化しており、 日本型経済システムに対する極端な悲観論も影をひそめています。 都心の地価の下げ止まりに伴う不動産取得ラッシュが起きていることなど、 90年代からのリバウンドといった現象も散見されるようになっています。

 こうしたなかで、景気の再拡大を裏付ける数字が見られ始めてきました。 設備投資の先行指標と言われている機械受注(船舶電力を除く民需)は10−12月期がプラスとなり、 1−3月期の見通しも前期比9.9%増と好調です。鉱工業生産指数も1月は4年ぶりの高水準となりました。 消費も、1月の小売業販売額や百貨店売上高や家計調査が前年比プラスになるなど、明るい材料に注目してもよいのかもしれません。

 景気弱気派は、昨年後半の経済指標を見て、既に景気が方向を転換して後退をはじめたと考えているようですが、 そういう可能性は小さいでしょう。 比較的楽観的なエコノミストの中でも「今年後半から拡大トレンドに復帰する」といった見方が多いようですが、 景気はすでに拡大トレンドに復帰していると考えておいた方がよいのではないでしょうか。

 今後についても、順調な拡大をメインシナリオと考えています。 国内を見る限り、大きなリスクは見当たりません。 もっとも、海外発のリスクには留意しておく必要があるでしょう。 なかでも、米国の長期金利は、なぜ上昇しないのかが不思議だと言われており、 今後上昇していく可能性が高いでしょう。 低金利が住宅投資の好調のみならず、住宅価格高騰を通じて消費活動にも貢献していることを考えると、 これが大きく上昇したときの影響が懸念されるところです。 米国の景気減速が意外なほど日本経済に影響を及ぼす可能性がある拙稿( 御参照 )ことを考えあわせると、 日本経済のリスクシナリオとしてウォッチしておく必要がありそうです。 もっとも、米連銀が巧妙な手綱捌きで長期金利の急騰を回避してくれるというのがメインシナリオであり、 その場合には日本経済への影響は限定的なものにとどまるということになるでしょうから、 過度の心配は不要だと思われます。

 


以 上

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