2005年03月30日

塚崎 公義

 

ニッポン放送問題が再興させる日本的経営システム


 ライブドアによるニッポン放送の買収が話題を集めている。 ライブドアとフジテレビのバトルに対する野次馬的興味に加え、ニッポン放送のコーポレートガバナンスと従業員の勤労モティベーション、ライブドアの知名度向上戦略の巧拙、転換社債引受証券会社が発行体企業の株価を操作する誘因、といった点も話題となり得よう。 しかし、何と言っても本件の持つ最大のインパクトは、なすがままに侵食されてきた「日本的な経営システム」が守りを固めて反攻する契機となったことである。

 思えばバブル期に尊大になりすぎていた日本人は、バブル崩壊後に卑屈になりすぎ、振り子が両極端に振れていたが、このところ中庸に戻りつつあるようだ。 エンロンといった敵失にも助けられて極端な対米劣等感は遠のいたし、構造問題があると景気が回復しないといった情緒的な議論も聞かれなくなった。

 こうした中で、グローバルスタンダードが必ずしも日本には馴染まないということがわかってきた。 遠くにあるときは輝いて見えていたが、実際に接してみると日本的な文化や価値観と相容れないことが実感され、拒絶反応も高まりつつあるようだ。 たとえば人事管理における成果主義などはブーム的な導入ラッシュが終わり、元に戻す動きも見られ始めている。 日本企業でありながらグローバルスタンダードの手本のように言われていた企業では、経営不振により経営陣が退陣した。 対日進出した大手小売が撤退するなど、外資が日本的な文化の壁に阻まれた例も少なくない。 外資の手に渡った銀行なども、株主としての外資は潤ったようだが、日本経済全体を考えるとポジティブな影響をもたらしたとは言い難い。

 こうした状況下で今回のニッポン放送の件が発生したことは、日本的経営システムが 再興する流れを促進したと言えるだろう。 法務省は直ちに「会社法案中で外国株式を使った企業合併を認める部分の施行を1年凍結する」方針を決めているし、今後は株式を公開する企業が減り、あるいは株式の持ち合いを再開する企業グループが増えてくるかもしれない。

 筆者は、「日本的システムにはそれなりの長所があり、鎖国的な状況では非常にうまく機能する。 一方で、開国すると脆弱であるという難点がある」と考えている(拙稿 「オオカミの国と羊の国」 御参照)。 したがって、外資などに対する拒絶反応が高まり、「国境の壁を高めて日本的な文化と価値観を共有する世界の中で経済活動を営もう」という流れが形成されるとすれば、それは一つの試みとして歓迎したいと思う。 「時代錯誤だ」という批判は当然あるだろうが、大きな振り子が戻りつつあることを考えると、そうした批判の方が時代錯誤であるとも言えるのではなかろうか。

 


以 上

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