2005年04月25日

塚崎 公義

 

不均衡が支える世界経済の発展


 物事には二面性があります。 不均衡という言葉には悪い語感がありますし、米国の双子の赤字、中国の余剰労働力(内陸部と沿岸部の貧富の格差が拡大して内陸から大量の労働者が職を求めて出てきていることなど)、主要先進国の財政赤字、といった不均衡を「望ましい」と考えている人はいないでしょう。 しかし、現在の世界経済を見渡すと、こうした不均衡が経済発展の源になっている姿が見えてきます。

 米国が経常収支赤字を気にせず世界中からモノを買い続けているから世界的に景気が回復しているわけですし、中国が余剰労働力を抱えているがゆえに安価な労働集約型製品を世界中に供給し、世界的なインフレ圧力の抑制に貢献しているというわけです。 財政赤字についても、米国経済がITバブル崩壊後に大幅減税で救われたのみならず、小泉内閣の赤字拡大容認路線への転換(赤字30兆円に固執せず)が日本経済の回復を支えているわけです。 米国が輸入を止めたり中国が輸出を止めたり先進国が大増税をした場合を想像してみれば、「不均衡の貢献度」が容易に理解できるでしょう。

 ここで注目すべきは、今後数年を考えた場合にも、こうした不均衡が持続して経済発展を支え続ける可能性が高いということです。

 米国は経常収支赤字でも特段困っていませんし、今後数年間も特段困ることは起きないでしょう。 「米国の双子の赤字でドルが暴落する」という人は多数いますが、米国には「基軸通貨国の特権」があるので、それほど懸念する必要はありません。 ドルが暴落した場合には貿易相手国が米国以上に困るため、為替介入をして米国に公的資金を還流してくれるからです。

 中国の余剰労働力も、内陸部に数億人も貧しい人々がいることを考えると、数年以内に解消されることはないでしょう。 内陸部も少しずつは豊かになっていくでしょうが、世界的にみて安価な労働力の供給源であり続けることは間違いないと思います。

 財政赤字も、急激には減らないでしょう。米国は真剣に赤字削減に取り組もうという強いインセンティブに欠けていますし、欧州は安定成長協定の緩和により財政規律は緩む方向かもしれません。 日本の財政赤字は緩やかに減っていく方向でしょうが、過去に学んでいる政府は急激な増税などを回避するはずです。
 それで問題が生じるかというと、数年間に限っていえば先進各国の国債が暴落する可能性は小さいでしょう。 たとえば最も財政赤字が深刻な日本では、為替リスクをおそれた資金が消去法的に日本国債を買うからです。

 不均衡というと「不均衡があるから発展しない」「不均衡が是正される過程で経済は失速する」といった具合に景気弱気派が好んで用いる用語ですが、今次局面をみると、どうも景気の弱気材料は言えないようですね。

 


以 上

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