2008年10月08日

塚崎 公義

 

株価暴落に思う


 10月7日、J-WAVE JAM THE WORLDの「THE CUTTING EDGE」のコーナーに出演しました。下記は、その際に用意した想定問答です。結局は想定問答と大幅に異なる内容となりましたが。


Q. アメリカで金融安定化法案が可決したにも関わらず、NYダウが大幅に下げた背景は?

A. サブプライムの問題は、昨年から話題になっていましたし、株価も大きく下がっていました。しかし、市場では、最後は政府が何とかするだろう、という安心感が残っていたわけです。この安心感が、ダムのような働きをして、金融不安という洪水をせき止めていた、というイメージでしょう。
 先月、リーマンブラザーズを米国政府が助けなかった、というか見殺しにしたことで、世界の金融市場は、洪水でダムが決壊したような騒ぎになっています。
 ダムが決壊してしまうと、濁流を押しとどめるのは簡単ではありません。金融安定化法は思い切った法律ですが、それでも足りなかったということでしょう。
 リーマンを助けなかった、というアメリカ政府の大失敗が、最近の株価暴落の原因だと言えるでしょう。


Q. 当面、世界の金融市場はどんな状況になると予想される?

A. ダムが崩壊した後に洪水がどうなるか、ということを予想するのは簡単ではありません。ただ、言えることは、洪水を押しとどめるためには、各国政府が断固たる決意を持って対処することであり、政府の決心が堅いことを金融市場が信じる必要がある、ということです。
 リーマンを見殺しにしたことで、米国政府は金融市場の信用を失いました。一度失った信用を取り戻すのは、どんな場合でも楽ではありませんよね。


Q. 日経平均株価はどのくらいまで下げる? 円高はどのくらいまで進む?

A. 日本経済のことだけを考えるならば、株価が1万円を割ったことは不思議でなりません。90年代に山一證券が潰れた時よりも今の方が株価がはるかに安いのですが、それは理屈では説明しにくい現象です。
 日経平均が下がっているのは、世界の投資家が狼狽売りをしていることが原因なのです。
 したがって、日経平均が下げ止まるのは、先ほどと同様に、先進国政府の決意を市場が信じた時だということになります。それが何時なのかは、先進国政府がどこまで断固たる決意で問題に取り組むかにかかっているでしょう。
 各国政府が何もしなければ、世界の株価は下がり続けると思います。ドルも同様に下がり続けるでしょう。しかし実際には、各国政府が何もしないということは考えられません。問題は、断固とした対策が採られるタイミングが何時になるか、ですね。


Q. 「世界恐慌」に陥る可能性は? いつごろ?

A.  恐慌という言葉の厳密な意味は、よくわかりませんが、恐ろしいのは、人々が御互いを信用できなくなることです。預金者は銀行を見たら潰れると思って預金をおろす、銀行は借り手を見たら潰れると思って融資を引き揚げる、というような事態になったら、経済は壊滅状態と言えるでしょう。
 仮に先進国政府が何もしなければ、半年か一年でそうした状況になるかもしれません。しかし、繰り返しますが、政府が何もしないということは考えられないので、結果としては恐慌になるという心配はしなくてよいと思います。


Q. 与謝野経済財政担当大臣は「日本経済は底堅く健全」と述べているが?

A. 日本経済が不況であることは間違いありません。しかし、アメリカやヨーロッパの経済と比べると、日本経済は遥かにマシな状況です。住宅バブルに踊っていたわけではありませんし、銀行も欧米の銀行よりも遥かにマシな状況にあります。
 今後についても、日本経済は欧米経済よりもマシな状態が続くでしょう。欧米の不況によって原油などの価格が下がってきたことも、日本経済にとっては大きな下支え材料です。


Q. アメリカなどよりも先に日本の株価は底を打つ? いつごろ?

A. 残念ですが、今の日本の株価は、日本経済が悪いから下がっている、というわけではないので、今後についてもアメリカ次第ということになるでしょう。アメリカの株価が底を打つのは、先進国政府が本気の対策を打った時であり、その時に日本株も一緒に回復するということだと思います。


Q. 日本政府が打つべき対策とは?

A. 問題の根っこが日本経済ではないので、日本国内で出来ることは限られています。
 私が日本政府に一番期待しているのは、欧米先進国の政府に断固とした対策を要求することです。そして、そのためには日本は如何なる協力も惜しまない、という強いメッセージを送ることです。
 金融危機の時の日本は、日銀が通常では考えられないような金融の緩和を行ないましたし、小渕総理が通常では考えられないような大胆な景気対策を打ちました。これが危機を沈静化したのだという経験を、是非とも先進各国に伝えていただければと思います。


Q. 世界全体が経済的に回復するのはいつごろ?そのために必要な対策は?

A. 打つべき対策は明らかで、「どんなに税金を使っても金融機関は潰さない」、という強いメッセージを市場に送ることです。「だから金融機関同士の資金の貸し借りを安心して行なってください」、という宣伝を繰り返すことです。
 そのために重要なことは、税金を使うことを国民に納得させることです。そのためには、銀行が潰れると庶民の生活が破壊されるという宣伝をすることです。税金で救うのは、銀行ではなく、庶民の生活なのです。
 米国の世論を見ていて、昔聞いた童話を思い出しました。口だけが美味しいものを食べているのを見た手が、口を嫉んで、食べ物を口に運ぶのをやめてしまったという話です。結局は手にも栄養が来なくて困った、というのです。そうならないように、政府が選挙民を説得できるか否かが勝負なのかもしれません。
 各国政府が対策を打っても、世界の景気が回復するまでに早くて1年、普通に考えれば2年はかかるでしょう。リーマンを見殺しにした報いは非常に大きかったというわけです。
 もっとも、日本経済に関して言えば、景気の状態も銀行の状態も欧米より大分マシですし、原油などの価格が低下することの恩恵も日本が一番受けるでしょうから、欧米諸国よりも先に景気が回復する可能性はあると思います。


 ベストなシナリオとして、先進国政府による断固とした対策が今ただちにとられれば、日本の景気は半年後に回復に向かう可能性もあるでしょう。もっとも、対策が1日おくれれば、事態が悪化するので回復が3日遅れる、ということでしょうから、楽観は禁物ですが。



 


以 上

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