2009年04月27日

塚崎 公義

 

恐慌の恐怖からの解放



(はじめに)
 株価の回復を受けて、景気が回復をはじめたのか否か、という議論を耳にするようになりました。 昨年末から強気論を唱えてきた筆者としては、珍しく予想が当たったということになるのでしょうか。 今回は、人々のマインドに焦点を当てて考えてみましょう。


(景気は気から)
 各種経済指標を均してみると、水準は引き続き非常に低いながらも、方向としては下げ止まりつつあります。 経済指標も企業業績も、悪いながらも市場の予想を上回るものが散見されるようになりました。 こうした中で、株価が回復を見せています。 売られすぎていた部分の一部が戻ってきたという意味では、通常の市場の変動の範囲内とも言えるでしょうが、今回は特別な意味があるかもしれません。
 直接の影響としては、株価の回復が投資家たちのリスクテイク能力を回復させ、それが凍り付いている世界の金融市場を甦らせる効果が期待されることです。 そうなれば、株価の回復は単なる先行指標ではなく、景気回復の原動力だということになるでしょう。
 しかし、更に重要なことは、今次株価回復の背景にある投資家たちのマインドの変化です。 日経平均7千円という水準は、「世界恐慌さえ来ないならば、10年以内には1万円を確実に超えるだろう」「けれども、世界恐慌のリスクを考えると、買いの手が出ない」という心理的な綱引きの結果であったはずですから、投資家たちが世界恐慌の恐怖から解放された事で株価が戻ったのは、ある意味で当然のことだと言えるでしょう。 GMの破綻予想が高まっても世界恐慌という言葉が聞かれないという現状は、3ヶ月前には考えられなかった事です。
 マインドが変化したのは、投資家だけではなく、消費者も同様のはずです。 そうだとすれば、世界恐慌が来るかもしれないと考えて財布の紐を締めていた消費者が消費を再開するかもしれません。 現在耐久消費財の消費が落ちているのは、主に消費者心理によるものです。 実際に派遣切りに遭った人の消費が減った以上に、将来不安から消費を手控えている人の方が遥かに多いのです。 そうした人々のマインドが戻ってくれば、耐久消費財の消費が復活してくる可能性は高いでしょう。 企業家のマインドが戻ってくれば、投資も戻ってくるかもしれません。


(景気後退が短い理由)
 前回の景気の山が1昨年の10月だとすれば、既に今次景気後退は1年半になるわけですが、今次後退局面は、「サブプライム問題による金融村の不振と原油高による実体経済の不振の共存」と「リーマン・ショックによる景気悪化」という全く異なる二つの局面が、間に景気拡大局面を挟まずに連続しているということですから、後者の局面に注目すれば景気後退は半年しか経っていないということになります。 これが、「景気がそれほど早く回復するはずが無い」という弱気論者の一つの根拠となっているわけです。
 しかし、今回の景気後退は、通常の景気後退と全く性質の異なるものですから、「過去の景気後退局面よりも短いはずがない」といった思い込みは禁物です。 通常の景気後退は、売れない→作らない→雇わない→もらえない→買わない→売れないといった悪循環で景気が悪化していくので、所得の減少が消費を抑えることになり、雇用が回復するまでは簡単には回復しないわけです。 しかし、今回は、所得がそれほど減少せずにマインド悪化によって消費が落ち込んでいるだけですから、マインドさえ回復すれば、消費が短期間で再び増加に転じることは充分に可能であるわけです。
 もちろん、過去の消費の減少が時間差を伴なって雇用や賃金を減らす力が働きますから、マインドの回復と所得の減少が綱引きをするわけで、一直線に消費が戻るとは思われませんが、綱引きの結果として消費が拡大に転じ、方向としては景気が緩やかながら回復局面にはいる時期は、それほど先ではない(あるいは既にはいっている)と思われます。

 今回は以上です。




 


以 上

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